先日7月29日(水)は仙台市で『第18期 住宅空調設計講座』の修了発表があり、
翌日7月30日は『第26回 住まいるlab.in郡山』として(有)タカモク様の完成現場見学へ参加をさせていただきました。
この2日間の学びや経験、また至るまでの経緯がとても濃く、そして空調講座も住まいるlab.の開催もこうして参加をさせていただいた自分自身が発信をしていくことまで含めて開催意図であると思っております。
(株)渡辺工務店 hygge 渡邊の視点からになりますが空調講座の修了発表の内容や見学物件での学びをしっかりとブログに書き留めていきますのでどうぞ最後までご覧ください。
【第18期 住宅空調設計講座 修了発表のこと】
修了発表ではこれから着工予定であるhygge#013福島市八木田並柳の住まいの空調計画を作成・発表いたしました。
物件に対する空調計画作成のタイミングとしては間取りや外観なども含めたベースプランは出来ており、構造計算や各種申請の準備が進められているところでの計画作成となりました。



●事前に検討していたこと(空調に関するところの抜粋)
・暖房メインは床下エアコン1台
・冷房メインは2Fホールエアコン1台
・南面の窓が比較的大きいため遮蔽措置を提案する
・吹き抜けを活用して空気の一筆書き
etc.
●空調計画前に解決していなかったこと
・2Fホールの冷房で1F主寝室をどこまで冷やせるのか
・2Fホールの冷房は吹き抜けに直接冷気を送り込むか階段と分散するか
・1階床ガラリはどのように何個計画したらよいか
・冷房エアコンは何kW(何帖用)で間に合いそうか
・冷房エアコンは1Fと2Fに分けた方がよいか
・換気システムの給気や排気はどの位置に設けるか
etc.



平面図にエアコン取付位置や換気システムの給排気位置、吹き抜けや階段でどのくらいの空気が上昇下降する見込みか、各エアコンの吹き出す空気の勢いが落ち着く位置はどこかなど空調設計に入るにあたり前提条件をまとめていきました。
立面プランには簡単ですが日射遮蔽措置を‘‘不利側‘‘で見込むことに。
日射取得量(夏の日中の陽当たり)も適当には見込めないのでデータベースから反映しました。
外観3Dパースも使って個別検討した部屋の位置を見やすくしてみました。(発表の際は時間に限りがあり映せた時間は説明込み5秒くらいで・・・)

次に気象庁のサイトから福島市の過去5年分の1時間おきの外気温や相対湿度データを取得して検討を行う条件を決めまして、今回は画像にある6つの条件から家全体と個室の計画を進めていきました。
適当に最高気温や相対湿度を組み合わせて検討すると実際に起こりえない気象条件ができあがるので注意です。
夏の外気温などをみていくと今後はさらに夏の外部環境が厳しくなっていくのかなと思ってしまいます。

検討順をまとめた資料です。
レンジフードの使用時間や乾太くんをお使いになるかなどお施主様に聞き取りをしながら計算の条件に加味していきます。これで1時間あたりの換気量に違いが出ればもちろん想定する結果が実際と異なってしまいますので換気計算書の通りとはいきません。‘‘実質‘‘換気風量を想定することが大事です。
熱交換換気システムの場合は温度や湿度の交換効率がこちらも違ってきますので、別な計画で採用する場合にはしっかり補正するようにします。

まずは夏から計算しました。


吹き抜けや階段などを使いながら2Fホールの冷房エアコンにしっかりと空気が戻るか断面や3Dを使ってご説明しました。
LDKは特に家電なども集中しているため室内で発熱するものも多く、料理を行ったりもしますので暑くなってしまいますので、そのため2FホールからLDKに向けて積極的に冷気を持っていく計画です。
そして温度の高い空気が戻ってきてエアコンに吸われていくのがポイント。
それができないと限られた空間しか冷やすことができず、送風運転となって湿気をまた吹き出してしまう状態となり‘‘湿気戻り‘‘が発生します。
空調や換気の話題になると「循環」という言葉がよく出てくるところですが、多くの場合その解釈に何かしらの間違いや勘違いがあると思っています。
換気は新鮮な空気を取り入れて汚染された空気を排出するものですし、循環したら危険ですよね・・・
エアコンには吹き出す分の空気が戻ってこなければなりませんので─
しっかりと整理して計画するためには空調も換気もどのくらいの空気の量が動くのかを知らなければならず、それが実現できる空間または設備などが用意されているかなど大事なことがありますので、一口に「循環します」という言葉だけでは計画・検討を行ったと呼べるものではないのです。

そして作成した夏の検討の一例がこちらのシートになります。
福島市の過去5年の気象データで1番気温と湿度の条件が厳しかった日の空調についてです。
料理や家電などから熱が発生して、室内干しや食洗器からは湿気も出ており、さらに窓からは日射熱も入ってくる環境が想定されています。
このような場面を切り取って計画すると冷房用エアコンは4.0kW(14帖用)でも足りない・・・

某M社のエアコン4.0kwの場合、冷房能力は最大で4.3kWまで(4,300W)であります。
空調設計シートの計算結果からすると1番厳しい条件に対応するためにはこの能力以上が必要・・・
↑の画像には選定した理由が書かれておりますが、その理由について根拠としたシートが次のシートです。

過去5年の気象データから2番目に気温と相対湿度の条件が厳しかった日を想定した計算結果です。
こちらは冷房能力4,220Wで収まりましたので↑の4.0kW(14帖用)エアコンで賄えると判断。
発表の際には他にも福島市の気象データで気温が最も高かった38.3℃の日や同日の個室の室内環境なども出させていただきまして4.0kW(14帖用)エアコンで快適な室内環境設定にできることがわかりました。
しかし・・・これは最適解ではありませんでした。
発表後に講師である森さんから「福島の気象条件をみると確かに真夏の日中は気温が高い時もあり湿度も含め厳しい日は多いですが、朝晩はそこまで暑くならないなど温度変化があることを考えた方が良い。であれば季節平均で必要な能力を確認して、厳しい時にどのような環境になるのかを想定した方が現実的な空調計画ができます。」とのご助言をいただきました。
また「エアコン1台の冷房にこだわらずに能力の小さいエアコンを2台設ける計画にするなど対応策は他にも考えられる。」とも併せて教えていただきました。
私は高性能住宅はエアコン1台で何とかと固執していた部分がありました。
そして厳しい気象条件の中でも快適な環境とするためにそこばかりに意識が向いてしまっていたのです。
そのため考えを改めて・・・


お施主様には季節平均から計算した結果をもとにエアコンや室内環境の想定をお伝えすることにしました。
この計算シートは事前に作っていたのですが発表では使用しなかったものでエアコンは2.8kW(10帖用)をメインの冷房用エアコンとします。
今、2.8kWで冷房した場合に夏の温度湿度が厳しい条件の際にはどのような室内環境が想定されるか追加で計算を行っているところです。
同条件で個室まで計算を行い冷房エアコン2台目(2.2kW 6帖用)の検討をします。
後に出てきます冬の暖房「床下エアコン」の検討にもつながってくるのですが・・・
‘‘床ちょっと上エアコン‘‘の採用が現実的になりそうです。

続きましては梅雨の検討です。
エアコンは優秀な除湿器でもあります。排水は外に配管が出されていますので連続の排水に全く問題がありません。
しかしながら梅雨に冷房や除湿運転をしていて「寒くなる」とのお悩みを聞くことが少なくありません。
そこで作成したシートが↓

こちらは2Fホールのエアコンで冷房運転を行い除湿をしながら、同時に床下エアコンで暖房を行う‘‘再熱除湿‘‘を計算したシートで室温25.1℃・相対湿度51%というとてもサラッとした室内環境が作れてしまう想定です。
出来ることですのでお施主様にお伝えしたい方法になります。

他にも梅雨に何もしなかった場合の室内環境と‘‘除湿器のみ‘‘を使った場合の比較も作成してみました。
床下エアコンによる再熱を行って冷房したパターンに比べるとどうしても湿度は高くなってしまいますので、お引き渡しの前に1番湿度が下げられる可能性も含めてご説明をするのが空調講座を受講した意味であると思います。

空調設計シートにつきましては最後になりますが冬の検討です。
エアコンによる暖房は‘‘加温のみ‘‘であり、冬は空気が乾燥していますので何かしらの方法で加湿も必要な季節です。


床下エアコンによる暖房をご提案していくためにもまた、室内気の動きや風量の想定が欠かせません。
これを無視したり何となく行ってしまうと‘‘うまくいきません‘‘
床下の基礎形状や床ガラリの量、床下エアコン本体の設置位置もしっかりと検討します。
何かに検討漏れがあるとやはり‘‘うまくいきません‘‘

床下エアコンの能力選定は‘‘大寒波‘‘の状況から選定に至りました。
また外気温に対する床下エアコンの‘‘低温時能力‘‘も福島の冬では大事なことです。
一般的にエアコンは外気温が下がるほどに能力も低下してしまい、その低温時に高い能力で運転するのが寒冷地エアコンであり、カタログで必ず確認するところになります。

この大寒波の日の家全体の空調設計から個室の検討を行い、安全な室温が確認できましたので、冬の明け方の季節平均気温の計算も行った上で冬の検討は完了としました。ご参考までに個室の検討結果は↓となります。個室にはエアコンやヒーターなどの暖房機器は無く‘‘人体発熱‘‘によって室温が上昇している結果となります。(想定した外部環境は季節平均です)

加湿についても書きたいと思います。
↑の冬の家全体の検討の中で‘‘浴槽‘‘からの加湿を見込んでおりました。
浴槽には大量のお湯・水が入っておりますのでただ捨ててしまうのはもったいないことですし、冬は空気中の水分量(絶対湿度)がとても少ないので浴槽から室内に水分を運んできても尚、そこまで加湿できない状況になります。
個室に対して加湿器を使うなど加湿の方法やその環境を計算してお伝えいたします。
個室の検討では床下エアコンによる暖房によって床面が温められている熱は数字として反映しておりません。
床下エアコンの熱を個室に反映する計算にする場合は‘‘床ガラリ‘‘を室内に設けることにしています。
↓に再度基礎等の検討をした資料を掲載します。

↑の平面図の中にある「黄色い■」が床ガラリ位置になります。
床ガラリの位置は
・リビング南の窓前(屋根や外壁面や基礎など6面あるうち5面が外に面する空間のため)
・洗面洗濯室(床下エアコンより距離のある水まわりを暖かくしたい)
・玄関ホール(玄関ドアから出入りする度に冷気が流入するため)
主寝室(個室)が冬の平均的な明け方の外気温-1℃程度になった場合、室温は24℃となる見込みで、全体設計で想定した家中の室温23℃よりも上昇していきます。
そのため‘‘床ガラリ‘‘を設けた場合には室温がさらに上昇していきますので、入口扉を開けて廊下に排熱することが必要になってしまう可能性が考えられます。
そのため主寝室入口の脇にガラリを設けてホールや玄関に熱を配る計画にすることで主寝室とホールの温度差もより少なくなると想定した計画となります。

↑のイメージが暖房時の検討の最後に出てきました「床ちょっと上エアコン」になります。
下目に吹き出すことで床下エアコン暖房、床上に吹き出すことで冷房補助エアコンの二役を担おうという計画です。
暖房時に暖気が床上に漏れない工夫や冷房時に床下に冷気が入らない工夫が必須となりますので取り付け方や施工法は要確認となります。
今回プランしました住宅の場合は真夏の日中にもし主寝室が暑くなった場合など特定のシーンに対応するためにご提案するもので、同時に冷房メインエアコンが故障した際のバックアップの役割も兼ねて採用することとしました。
空調設計を行うこと─
高断熱高気密だから必ずしもエアコン1台で全部屋が快適になるとは言い切れません。
エアコンから離れた空間や住宅の形状によって温度差が大きくなる部屋も十分にあり得ます。
また、どのような外部環境の時にどのくらいのエアコン能力が必要になるかを計算することで適切な能力選定が考えられるようになり、条件や計算結果によってはエアコンを増やす理由も明確になります。
そして不利になる空間があればお施主様も一緒に把握できることはお互いのために大切です。
だからこそプランを作成する時に私たちも空気の移動量やエアコンの位置を考えながらより良い空間をご提案できるようになります。
hyggeはこれから全棟で空調設計を行いますので、ご興味がございましたらお気軽にお声掛けいただけましたら嬉しいです。
今回のブログに記載した内容を個別にお話しさせていただきます─
