家づくりの‘‘当たり前‘‘を見直すこと

こんにちは。hygge代表の渡邊です。
今回のブログは建築費の予算配分を考えていくにあたり、
これまで「当たり前」に考えてきてしまったことが本当に必要なことだったのかを見直してみたいと思います。
お打ち合わせをしていますと、
「性能は守りたい。個室もしっかり用意しておきたい。でも、理想の設備はガマンしなくちゃいけないのかな・・・」
など様々な葛藤が出てくることが少なくありません。
福島で暮らしていると、実家が広々としていた経験や、
まわりにもそこまでコンパクトな家を建てている人も少ないことなどがあって、
暗黙の了解的に「ここは、こう。」と決まってしまっていることがあります。
満足して暮らせる住まいづくりを考えていくために、
「実はそこまではいらないのかもしれない。」
という部分を改めて見直してまいりましょう。
ボリュームのある内容になりますが、ぜひ最後までよろしくお願いいたします。
※今回の投稿から‘‘読みやすさ‘‘にも気を付けて書かせていただきます─

この記事の内容

1|建築費が上がった今、改めて考えること

ここ数年、住宅の価格は大きく上がりました。

2021年3月頃からはじまった第3次ウッドショックによる木材だけではなく、コンクリート、断熱材、サッシ、住宅設備、電気や給排水設備、物流費、人件費etc.

原因は一つだけではありません。

国土交通省も建設工事費の変化を「建設工事費デフレーター」として継続的に公表しており、2026年現在も最新データへの更新が続いています。
建設工事費デフレーター – 国土交通省

住宅を取り巻くコスト環境が大きく変化していることは、もちろん“現場”として強く感じるところです。

それでも、新築住宅が必要な方がいらっしゃいますので、こうしたブログを投稿しています。

今、お客様方とお打ち合わせをしている場面でも当てはまることがあります。

変わらざるを得ない、変えざるを得ないことが、

「あれも、これも」慣例として足してしまう家づくりの考え方です。

断熱性能は大切。

耐震性能も大切。

好きなキッチンも使いたい。

自然素材も取り入れたい。

家具にもこだわりたい。

光熱費や将来のメンテナンスも考えたい。

広々としたリビングに、家族それぞれの個室が欲しい。

もちろん、できることなら全部叶えたいという気持ちはあります。

しかし、どのような住まいづくりでも“予算配分”を考えなくてはなりません。

改めてお客様と共に考えていることは、

これまで当たり前だと思っていたものは、本当に必要なのだろうか

ということです。

2|性能を落とす前に、家そのものを見直す

「予算が合わない……」

そんなときに一般的に最初に考えてしまうことが、仕様を落とすことです。

窓のグレードを下げる。

断熱材を減らす。

構造計算を行わない。

また、

キッチンのグレードを下げる。

憧れの設備を諦めるetc.

もちろん、それに対して手立てを打つことができない訳ではありません。

しかし、後々に掛かる維持管理のことや機器更新費、電気代等を鑑みていくと、毎月・数年先と支出が増えることが想定できてしまいます。

ですから、手放しに

「予算通りになったからヨシ!」

と言って良いことにはならないと考えます。

とりあえず予算通りに建てていただき、後からたくさん設備の交換やリフォームの依頼をすることになる

そんな将来で良いのでしょうか。

結果的に出ていくお金は増えてしまいます

性能は落とせません。

だから、断熱をはじめとする性能や求める設備などがおおむね固定的となった場合、私たちは“将来にわたる暮らし方”を見つめ直します。

そこで、予算調整として家の坪数を小さく考え直すことが、決定打に繋がることがとても多くなりました。

同じ性能、同じ材料、同じ施工品質でつくるのであれば、基本的には小さな建物の方が使用する材料も施工する面積も少なくなります。

もちろん住宅には、キッチンやお風呂、トイレや給湯器など、床面積を小さくしてもなくならない費用があります。

建て坪が10坪でも100坪でも、生活をするために必要な設備は同じくあります。

そのため、

「面積を10%減らせば、価格も10%下がる」

という単純な話ではありません。

それでも、床、壁、天井、基礎、屋根、断熱材、外壁など、家がコンパクトになることで材料費や工事費を減らせることは事実です。

だから私たちも実務として、

面積を少し整理して、そこで生まれた予算を別のところへ振り分ける

ということをします。

例えば、性能を守る。

奥様が楽しみにしていたキッチンを選ぶ。

毎日触れる家具や素材に使う。

使わないかもしれない面積から、本当に叶えたい暮らし方や住環境へ予算を移している

そう考えています。

3|「30坪」「子ども部屋6畳」は、どこから来たのでしょうか

家の要望を伺っていると、

「30坪くらいは欲しいです」

「子ども部屋は6畳くらい」

「寝室は8畳でしょうか」

という言葉をよく聞きます。

もちろん、その広さが本当に必要なご家庭もあります。

考え直したいのは、その数字が出てきた“理由”です。

家とは、だいたいそういうものだから─

というイメージから決まっていることも少なくありません。

住宅情報誌。

建売などの不動産広告。

間取り集。

モデルハウス。

これまで住んできた実家。

周囲の住宅。

長い時間をかけて、「普通の家」というイメージが私たちの中に出来上がっています。

3LDK、4LDK。

LDKは20畳。

主寝室は8畳。

子ども一人に一部屋。

ウォークインクローゼット。

二階にもトイレ。

玄関にはシューズクローク。

一つひとつは便利で、

あるに越したことはないものばかりです。

でも、

「あると便利」と「なければ暮らせない」は違います。

ここを一度分けて考える必要があります。

4|必要なのは「子ども部屋」ではなく、子どもに必要な機能かもしれない

中でも、今回私が考えるきっかけになったことの一つが子ども部屋です。

「子ども部屋は個室として必要ですよね」

「二人いるので二部屋必要です」

「小さい部屋だとかわいそうでしょうか」

「フリースペースではなく、クローゼットまで扉付きで仕切っておいてください」

親として、とても自然な気持ちだと思います。

私自身、この心配を否定するつもりはありません。

思春期になれば、一人になりたいときもあります。

着替えたり、寝たり、自分の持ち物を管理したり、

友達との電話やオンラインでの交流や時には学習など、プライバシーが必要になる場面もあります。

だから、

「子どもに個人的な居場所なんて必要ない」

という話をするつもりではありません。

考える余地のあるところの一つとして、

子どもに必要なもの=6畳の子ども部屋」なのでしょうか?

ということです。

現在では当たり前のように感じる子どもの個室ですが、日本の住宅に昔から当然に存在していたわけではありません。

住宅史を見ると、子ども専用の部屋という考え方は近代以降に入り、戦後には家族共用の空間と個室を分ける住まい方が広がっていきました。

つまり、私たちが「当然」と思っている間取りも、時代や社会によってつくられてきたものです。

昔の家が良かったという話でも、今の家が間違っているということでもありません。

ただ、

昔から絶対に必要だったわけではないものを、今も無条件に必要だと考える必要はない

と考えを改めています。

では、子ども部屋で何をしているのでしょう。

少し分解してみますと、

寝る。

着替える。

勉強する。本を読む。

ゲームをする。

友達と話す。

自分の物を置く。

これらの機能や役割は、すべて6畳の個室の中に持たせなければならないのでしょうか。

勉強はリビングや共用のスタディスペースでするかもしれません。

衣類はファミリークローゼットや家事室にまとめられます。

小さい頃は兄弟で一つの部屋を使い、必要があれば間仕切りできるようにしておけます。

反対に、最初からコンパクトな個室をつくり、その代わり家族みんなが使える場所を広く、

複数の用途を持つ空間にする考え方もあります。

子どもが巣立った後は、仕切りを外したり、書斎や趣味室に変えたりできるようにしておく。

そうした可変性のある暮らし方に対応できる家にすることもできます。

そう考えていくと、

必要なのは「子ども部屋」と名付けた場所ではなく、その時々の子どもに必要な機能なのではないか。

というところに行き着きます。

5|この考え方は、家全体に当てはまります

そして、この考え方は子ども部屋だけではありません。

例えば「ウォークインクローゼットが必要」ではなく、

何を、どこで着替え、どこに収納すると暮らしやすいのか。

「客間が必要」ではなく、

一年に何回来客があり、誰が、どのくらい滞在するのか。

「主寝室は8畳」ではなく、

寝室では何をするのか。ベッド以外に何が必要なのか。

「LDKは20畳」ではなく、

家族がどこで何をして過ごしたいのか。

イメージで各部屋の大きさが決められていった結果、家は大きく想定されていくことが多くあります。

一方、暮らしに必要な機能から考えると、一つの空間に複数の役割を持たせることもできます。

限られた面積を‘‘時間‘‘によって使い分けるとしましたら、

家族で共有する。

将来、用途を変える

これは単に面積を小さくする技術ではなく、

不自由なく暮らすための“無駄のない建築計画

ではないでしょうか。

建て坪という数字だけを聞けば不安になります。

35坪より30坪。

30坪より27坪。

数字が小さくなるほど、何かを失っているように感じます。

でも、暮らしやすさは坪数だけでは決まりません。

35坪あっても、

長い廊下がある。

ほとんど使わない部屋がある。

生活動線が遠い。

部屋が細かく分断されている。

こうした家では、間取りによりますが広さの割に利便性が感じられないこともあります。

逆に面積が抑えられていても、

移動距離(生活動線)が短い。

収納が必要な場所にある。

視線が遠くまで抜ける。

高さに変化がある。

一つの場所を複数の用途に使えるようにする。

こうした工夫によって、数字以上の広がりや使いやすさ、心地よさを感じる暮らしを考えていくことができます。

だから、

「小さい家=窮屈な家」ではありません。

必要なものまで削れば不便になります。

でも、使っていない、あるいは使わない面積を整理するだけなら、暮らしの豊かさまで小さくなるとは限りません

6|「子ども部屋か、キッチンか。」

例えば、こんな状況を考えてみます。

お子様が2人いるご家族のご相談。

ご主人は光熱費や住宅性能も大事にしていて、子どもたちにはそれぞれ収納付きの6畳の個室を用意したい希望がある。

一方で、奥様には使いたいキッチンがある。

毎日料理をする場所で、居場所の一つになるところだから、キッチンは妥協したくない。

しかし、予算には上限があります。

子ども部屋。

キッチン。

断熱性能。

どれも大切です。

簡単に、

「どれか一つを諦めましょう」

と言える話ではありません。

ここで、

「子ども部屋をなくせばいい」

または、

「キッチンを安くすればいい」

でもなく、

考えなければならないのは、本当に三者択一なのかということだと思っています。

例えば、6畳だった子ども部屋を4.5畳にするとします。

2室で合計3畳。

1.5坪の差です。

建物自体の大きさを変えなくても、将来的に使い勝手を変えられるロフトのある家にする手段もあります。

必要な機能を考え、その空間の役割を変化させたり重複させたりできれば、建物そのものをコンパクトにできるかもしれません。

そこで生まれた予算によって、

欲しかったキッチンを選べるかもしれない。

断熱性能を落とさずに済むかもしれない。

希望の設備を採用できるかもしれない。

建築費の負担を減らせるかもしれない。

大切なのは、必要なものを残したまま、

「6畳でなければならない」という前提だけを外してみることです。

面積を減らすことで予算配分に選択肢が増えるのであれば、私はそこに価値があると思っています。

「本当に欲しかったキッチンを諦めて、大きな家をつくった」

よりも、

「自分たちの暮らし方が考えられたから、好きなキッチンで今日も料理をしている」

そんな暮らしも良いのではないでしょうか。

もちろん、ご家庭によって大切にしたいものは違います。

絶対に〇〇の照明器具だけは諦めたくない!!

という強い意志を持ったお客様もいらっしゃいます。

それが叶ったから豊かな暮らしになったのだと思っています。

7|面積の大きさではなく、暮らしている時間の質が高い家へ

予算を調整する方法として、

断熱材を薄くする。

窓の性能を下げる。

耐震性に関係する部分を簡略化する。

耐久性の低い材料へ変える。

こうした方法でも建築費を下げることはできます。

ただ、その変更が30年、40年、50年。

今となれば80年、100年と暮らしに影響するものなら、慎重に考えたいところです。

一度建ててしまえば、断熱部分を含め構造などは簡単には交換できません

一方、

ほとんど使わないかもしれない3畳をなくす。

長い廊下を短くする。

将来使わなくなる部屋の可変性を考えておく。

これらは「性能を削る」のとは性質が違います。

だから私は、

「予算が合わない=仕様を落とす」

と考える前に、

家そのものと、その家に必要な機能をじっくりと考えて、もう一度見直してみる。

という段階があって良いと思っています。

別な視点でみますと、大きな家になれば一般的には冷暖房する空間も増えます。

掃除する面積も増えます。

外壁、屋根、内装の面積も増えれば、将来修繕する範囲も増えます。

つまり、使わない面積にも、建てるときだけではなく、その後も維持する費用がかかります。

住宅の生涯コストを考えるうえでも、大切なことです。

もちろん、

「小さい家にすることが正しい」

という意味ではありません。

人生の一時期だけを基準に、家全体を固定してしまうことには少し慎重になってもいいと思います。

最初は家族みんなで使う。

成長したら分ける。

巣立ったらまた別の用途に使う。

家族の変化に合わせて、空間も役割を変える。

そんな家であれば、面積を大きくしなくても長い時間使い続けることができます。

そして、

ないと困る」と「ないと不安」は違うと考えます。

実際の暮らしから生まれた不安なのか。

これまで見てきた「普通の家」と違うから不安になっているだけなのか。

良い意味で一度疑ってみてもいいかもしれません。

経験したことのない暮らしを想像することは、もちろん簡単ではありません

だからこそ、

家具を置いたらどうなるか。

収納量は足りるのか。

家族が成長したらどう使うのか。

一つずつ私たち実務側が一緒に考えていきます。

これから着手する福島市内の住宅では、環境の変化を想定しながら子ども室やご主人様の書斎となる場所を二階ホールに計画して、ゲストルームとしての役割も持たせます。

一つの場所が、一つの役割しか持たない理由はありません。

大きな家に住んでいることより、

冬でも暖かく快適なこと。

好きなキッチンで毎日料理ができること。

電気代を少なく済ませ、快適に暮らせること。

家族が自然と集まれる場所があること。

手入れしながら長く使える材料で造られていること。

将来、子どもが巣立った後にも使いやすく変化させられること。

そうしたものも、暮らしの豊かさに変わりありません。

むしろ私たちがつくりたいのは、

面積の大きさではなく、暮らしている時間の質が高い家、暮らし方です。

子ども部屋が欲しい。

では、何のために?

大きなLDKが欲しい。

そこで、何をしたい?

一つずつ目的まで戻っていけば、

本当に必要なものと、

なんとなく必要だと思っていたものが、

少しずつ分かれてきます。

物価が上がったから、我慢だらけの家になってしまうわけではありません。

むしろ今は、

これまで「家とはこういうもの」と思っていたものを、一度見つめ直す機会になった。

そう考えています。

暮らしの変化に対応できる家なのか。

長く住み続けられ、住み継がれる家なのか。

これまでの「当たり前」を一度外してみると、

暮らしはもっと豊かにできるのではないでしょうか。

この度もありがとうございました。
住まいづくりのお役に立てましたら嬉しく思います。

hygge
~この家からはじまる かけがえのない暮らし~
代表 渡邊一紘

ご相談は代表 渡邊がお伺いいたします。

株式会社 渡辺工務店 常務取締役 
住宅事業部hygge 代表
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