パッシブデザイン

投稿に間が空いてしまい恐縮です。
今回はhyggeブログにて取り扱うことのなかった建築の『手法』について触れていきます。

私たちにお問い合わせをくださるお客様にお聞きしますと、導入は性能に関する検索結果が上位で、
特に断熱や気密をはじめとして、明確に「パッシブデザイン」や「壁体内結露」とお調べいただいている方がとても多くいらっしゃいます。
※パッシブハウスとパッシブデザインは異なりますのでご注意ください。

PassiveDesignTechnicalForum「Passive-DesignHouse」より引用

快適な住み心地を実現したり、さらなる省エネのために「パッシブデザイン」を検討したいという認識には確実な広がりを感じております。
余談ですが私は‘‘Passive-Design Technical Forum‘‘様の‘‘パッシブデザイン講義‘‘を2018年に受講いたしました。

パッシブデザインには5つの要素があります。
・断熱(気密)※基本 冬のパッシブ
・日射遮蔽 ※基本 夏のパッシブ
・日射熱利用暖房 冬のパッシブ
・昼光利用 通年のパッシブ
・自然風利用 夏のパッシブ
これらを設計に組み込み、自然エネルギーを‘‘活用・調節‘‘することによって質の高い住環境を実現しながら省エネに寄与しようとする設計手法です。
大事な大前提がありまして、『断熱気密』をまず高めていただきたいです。
我慢の省エネではなく、快適になるほど省エネを理想とします。
パッシブデザインからみても太陽熱を守れなければ冬のパッシブが効きません。
今、電気代などエネルギー価格の高騰が問題となっております。
例えばエアコンが概ね1台で快適となるのか、複数台必要となるのかで支出に大きな差が生まれます。
まずは基本となる断熱気密を向上する、第一に取り入れなければ始まりません。
※太陽光発電や蓄電池の設置によるメリットはまた別な機会といたします。

『断熱気密』
主目的は冬の熱損失を防ぐことです。
窓の性能を上げるなど、性能向上の中にも更にバランスをとることが適切です。
付加断熱を行って壁の性能が上がっても、サッシが半樹脂ペアガラスでは窓廻りが寒くていられないなど、
こういったことにならないための相対的な性能向上がとても大切になります。
また、家全体の(暖房室と非暖房室)温度差を小さくしていくことや、床や壁等の表面温度が高くなることで体感温度も上がることで快適性が向上します。
断熱性能の低い家で暖かい家はない、ということです。
断熱性能が高いことで涼しくなるとは限らない点は、事項の日射遮蔽に記載します。
※パッシブデザインを考える上で、日射熱利用の観点も入りますが、このバランスから南面のみペアガラスの大きな窓という手法も少なくありません。福島の気候や気温的には南面ペアガラスは推奨されることがありますが、私はトリプルガラスとして開口部自体の性能をまずは高めた方が快適であると考えています。ペアガラスに断熱スクリーンを組み合わせるなど手法はありますが、パッシブは受動的であることから住まい手様の行動がなければ成立しないものでもあります。確定的な性能で快適が得られるのであれば、それは省エネに寄与していますからパッシブデザインの手法の一つと捉えましょう。

『日射遮蔽』
主目的は夏の涼しさです。冷房時に取り除く熱を減らし省エネとします。
日射遮蔽では、軒の出を深くしたり外付けシェードや葦簀(よしず)によって日陰をつくることが代表例です。
パッシブデザインの家、大きな窓に深い軒の出の家がイメージされるところです。
他にも、高断熱によって屋根や壁からの熱の侵入を減らす、通気層を設け熱を逃がす、遮熱効果のある仕上げ材を使う、植栽等によって日陰を作ることも日射遮蔽です。
位置によって、方位によって窓ガラスのガラス種類を日射遮蔽型(日射熱取得率24%のガラスなど)にすることを弊社では基本としています。日射取得型ガラスに外付けシェードを設けると樹脂サッシや木製サッシの場合において日射熱取得率を11%まで下げられることもあり、必ず遮蔽型ガラスと言い切りはしません。
パッシブは受動的であり、自らシェードを下げるという行為が発生します。これを行える場合は前述の取得型+シェードでありまして、そうならない場合は遮蔽型が良いです。
弊社の場合、不要な窓は設計しないというのも日射遮蔽のための断熱という考えです。※昼光利用と相反するため、クローク内の日焼け防止や浴室のルーバー付き窓は不要とするなど意図は必要です。
パッシブデザインは住まい手様の暮らし方によって考えや手法が変わるため、設計者と暮らし方をしっかり確認しましょう。

『日射熱利用暖房』
主目的は日射熱を獲得して室温を上昇、そして保温することで、理想はその熱を蓄熱することで夜間にも暖房として利用することになります。
弊社では適切な蓄熱性能を考え、設計施工に落とし込むことには着手出来ておらず、一般的な木造住宅にて蓄熱容量が大きく熱拡散性の低い建材は多くありません。
蓄熱できる建材を取り入れる場合、夏の対策は必須となります。
弊社の木繊維付加断熱材は夏に熱を入れにくくするものですが、これは冬に求められる蓄熱とは違います。
日射熱をより多く取り入れるための開口部設計、そして保温するための断熱性能向上をすることには大きな価値があります。
福島の場合、日射熱取得量が多い地域ではないこともあり、無暖房で過ごせるレベルとなりますと、相当な性能が必要になります。
※無暖房の室温は1番冷え込む日の出前の時間でみるものでありますのでご注意ください。日中の室温を提示されてもそれは自然室温と捉えないでください。
弊社のHEAT20 G3の実例にて、自然室温が20℃を保つことはできませんでした。
朝方と夜間の間歇運転にて、全室が20℃以上をキープすることは可能です。

『昼光利用』
主目的は自然光を光源として室内を明るくすることです。
方法は採光(自然光の取り入れ)と導光(光を奥に導く)になります。
採光については可能な限り多面採光が望ましいです。(1部屋に対して複数の窓)
部屋の種類によって求められる明るさが違いますので、日射遮蔽措置などに合わせて検討していきます。
一般に多く見られるのは、カーテンの締め切りです。
せっかく設けた窓のカーテンを閉め切る設計または暮らし方となるのならば、採風に用いない限りは窓を付けなくて良いと判断できます。またはハイサイドライト(高窓)の検討です。
横長のハイサイドライトは採光に役立ち、光が奥まで差し込むため導光としても優れます。
不要な窓の設置は断熱気密から防水性や防犯性まで損なうものがあるため、窓の設置意図は持つべきです。
窓の少ない住まいを推奨している訳ではなく、デメリットが多ければ付けない方が良い場合があります。
※窓前、特に大きな窓の前は荷物や家具が配置できないため、こういった意味でも設置意図は大切です。カーテン締め切りの状態は心理的にもあまり良いと思えません。
採光導光のために、吹き抜けは有効な手法です。
日照条件が悪い立地では導光の工夫によって室内環境が大きく変わってきます。
吹き抜けの他に、建具や壁に欄間(らんま)を設けて導光するのも良い手法と思います。
反射光を利用したライトシェルフ、天窓などから下層階まで導光するライトウェル(井戸の意味)、中庭のある建物などに用いられるライトコート(庭の意味)も手法となります。
日射遮蔽物を出して意図的に影としない限り有効な手法のため、中廊下にも水廻りにも採光のみならず導光を用いることで設計の幅が広がると思います。

PassiveDesignTechnicalForum「Passive-DesignHouse」より引用

『自然風利用』
主目的は涼感を得ること、排熱することです。
涼感も排熱も外気温が低い際に行うことが有効になります。
高性能住宅になると、エアコン等で室温が快適に保たれておりますので、あまり自然風利用は行っていないのが実情と思います。
通風を検討する上で、まずは全方位通風として各面から風を通せる窓配置を考えます。
そして窓形状を縦辷り窓にしたり、袖壁を設けることで風を捕まえる(ウィンドキャッチ)ことが可能です。
排熱のためにはより高い位置に窓を設けることも大切で、高窓は採光導光にも有効なため併せて検討しています。
通風は平面的に見た全方位だけではなく、上下で見た立体通風も検討でき、排熱は立体で検討しています。
画面上に画像を載せておりますのが卓越風向を示す図であり、その地域において月ごとによく吹く風向きをデータとして得ることができますが、必ずしも卓越風向の通りにはなりません。
風は道路に沿って吹いてきたり、または建物の間を通って吹いてきます。
そのため概ねの風向きを調べたのちに現地状況と照らし合わせ、道路をはじめ近隣の状況から読み解くのが良いです。

以上がパッシブデザインにおける手法の概要になります。
多くの項目に窓が関係していることが改めて分かります。
熱や光を取り入れ、遮蔽し、住まい手様の手によって活用・調節するのがパッシブデザインです。
パッシブデザインの家だから自然と快適省エネになる訳ではないことを念頭に、より省エネな暮らしをつくり、今後の環境までも守ってまいりましょう。
自分たちの手によって省エネに寄与できることがある、だからこそ取り入れていくことは、かけがえのない選択であると思います。
私たちの世代をはじめ、次世代のためにも。

hygge ~この家からはじまる かけがえのない暮らし~
代表 渡邊 一紘

hygge は福島県伊達市 株式会社渡辺工務店の住宅事業部です。
UA値0.3W/㎡・K以下、C値0.3㎠/㎡以下、許容応力度計算による耐震等級3を基本とした
高気密・高断熱・高性能住宅を建築しております。



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